『インターナショナル吉田版画アカデミー』について
『インターナショナル吉田版画アカデミー』は、1972年に版画家吉田遠志によって
指導には吉田遠志をはじめ、小松平八、テッド・コーリア、マイケル・バーデン、アン・レーマン、沼辺伸吉(以上敬称略)、吉田司らがあたってきました。これまで在籍したアーティストの国籍は、アイルランド、アメリカ、アルゼンチン、イギリス、インド、オーストラリア、カナダ、韓国、スイス、スペイン、台湾、ニュージーランド、フィリピン、フィンランド、フランス、南アフリカ、メキシコ、日本 など約20カ国にのぼる。
1980年に第一回吉田版画アカデミー展を銀座兜屋画廊にて開催して以来、2003年第24回展まで同画廊にて毎年開催。2004年第25回展を鎌倉のスージ&アンティークで、26回展より日本各地のモンベル・クラブにて巡回展。2008年28回展は世田谷美術館区民ギャラリーで開催。オープニング・レセプションには、各種のコンサートなども行い、会期中には摺りや彫りの実演も実施しました。
展覧会以外では早稲田大学国際部のカリキュラムの中での体験コースの授業や、外部の人達との勉強会、
アカデミーの基本的な理念と方針については、芸術は本来『自由であるべき』という考えに基づき、国籍 年齢などの制限もなく、時期に関係なく生徒を受け入れ、教室の使用時間も出来る限り自由にし、作品の主題についても各自の創造性を尊重してきました。芸術は自発性が大切であるという基本的理念から、授業の内容は木版画の技術を各自の創作活動に生かす事に重点を置き、一般の学校より自由な条件と環境を用意し、実験的な試みも行っていました。
芸術家にとって、芸性と経済性の価値観は対極にあるのが通常で、芸術は経済性の制約を受けるが芸術を志す者は芸術性を優先しなければならない、という理念をアカデミーの方針にもしていました。
日本の木版画の問題点と課題については、材料や道具の製作技術の継承、版木や和紙の材料の確保なども急務と思われます。海外で木版画を制作している版画家にとっても材料や道具の確保などが、さらに難しく大きな問題となっています。江戸時代に分業化が進み、高度に技術が発達してきたが、その為 現在その技術の伝承が難しくなっています。
これからは職人・版元・版画家など木版画に携わる個人の努力だけでは伝統木版を次の世代に引き継いでいく事が大変困難になっていくと予想されます。 一度失った技術は再び復活する事は難しく、世界に対する日本の責務は大変重いものがあります。
伝統的なものが衰退していく反面、新しい木版画技術の開発が進み木版画の可能性を拡げていくという面もあります。世界的には高い評価を受けている日本の木版画ではありますが、今後は浮世絵だけではなく現代の木版画の発展の為に広く理解者を増やしていく必要があると思われます。
吉田 司
インターナショナル吉田版画アカデミー代表